db
dornblatt
*samedi 28 janvier 2006

【 蟻の遊〔すさ〕び 】

—— j
ろっとだらしなく横になり、ずずっとコーヒーをすすり、だらっと本を読みながら、唐突に痒くなった股をポリポリ掻いていたのだった。
そういえばこの部位のことを「蟻の門渡り=ありのとわたり」と呼ぶんだったっけ。確か開高健氏の文章に、戸隠山かどこかの山小屋で、その辺の地名である蟻の門渡りについて若い女性と語りながら、ひとりニヤニヤするという話があったようななかったような。
蟻の門渡りというのは、文字通り蟻が列をなして歩くこと、もしくはそうしないと歩けないほど狭い道という意味なので、地名にそれを持ってくるのはわかるけれども、体の場所を指す名称として、それを最初に使ったのは誰だったのだろう。
単刀直入に会陰と口にすることが憚られ、さりとて何らかの形で婉曲に言わないわけにもいかない場、となるとやはり酒宴の席だったのだろうか。
しかし体の同じあたりのことを「鼠径=そけい」と呼ぶ。これもネズミの道と書くわけで、なにやら蟻の門渡りと通じるものがある気もする。もしかしたら蟻の門渡りも、昔の医学書に出てくる情趣のある医学用語だったりするのかもしれない。
そんなことを考えながら、もうちょっと上のあたりが痒くなったので掻きながら、そういえば誰かが、日の当たる縁側でごろごろしていると、ついつい陰嚢〔ふぐり〕を引っ張って皺を伸ばしてしまう、などという文章を書いていたのを、読んだ記憶があるようなないような。誰だったっけ。
もう、寝よ。
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